介護老人保健施設(老健)は、介護が必要な高齢者に介護やリハビリなどのサービスを提供し、自宅復帰をサポートする施設です。ここでは、老健の特徴、受けられるサービス、設備、入所条件、費用などについて詳しく解説します。
老健とは
老健は、地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが運営する公的な施設です。一般的な老人ホームとは異なり、医療やリハビリのケアが手厚く、自宅復帰のサポートがメインの施設です。利用者は病院から退院後の自宅復帰目的の方が多く、入所期間も3ヶ月~半年程度と短めであることが特徴です。
老健で提供されるサービス
老健は自宅復帰のサポートが主な目的となるため、提供サービスもリハビリや医療ケアが中心となります。
メインはリハビリ
作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などの配置が義務付けられており、専門のスタッフによるリハビリテーションが受けられます。ベッドから車いすへの移動や、歩行訓練といった日常生活に即したリハビリなど、個別に作られたプログラムを20~30分程度、週2回以上行います。
医療ケアも手厚い
老健はスタッフに医療従事者が多く、手厚い医療ケアを受けることができます。経管栄養や酸素吸入が必要な方など医療依存度が高い方も入所できることが一般的です。
人員は、入所者100人に対して常勤医師1人以上、入所者3人に対して看護師または介護職員1人以上の配置が義務付けられており、入所100名に対して9名以上の看護師が配置されております。(看護師・介護職員の総数の7分の2程度)
原則、看護師が24時間常駐しています。
日常生活のケアも行われる
リハビリや医療以外に、基本的な介護や日常生活のサポートも受けられます。例えば食事や排泄、入浴のサポート、おむつ交換、着替えの手伝い、居室の掃除やシーツ交換などです。
定員が100名以上の施設の場合は栄養士が1人以上配置されるため、栄養士によって栄養やカロリーが考えられた食事が提供されます。
自宅に戻るためのサポートが充実している
老健の主な目的は自宅への復帰なので、自宅に戻ったあとの生活が困らないように、さまざまなアドバイスやサポートも行われます。例えば家の環境や介護用具の準備などについてアドバイスをもらうことができます。
入所せずに利用できるサービス
老健は、入所者以外に対してもサービスを提供しています。主なサービスはデイケア(通所リハビリ)とショートステイ(短期入所生活介護)です。デイケアは通いながらリハビリなどを受けられるサービス、ショートステイは、自宅での介護ができなくなったときなどに、一時的に入所して介護を受けられるサービスです。
老健の設備
老健の施設・設備の特徴は、リハビリを行うための「機能訓練室」が充実していることです。ここでは機能訓練室をはじめ、居室やその他の設備について解説します。
居室は相部屋の場合が多い
老健の居室タイプは以下の4種類がありますが、多床室(相部屋)がメインとなっていることが一般的です。
・従来型個室:一般的な個室
・多床室:1部屋に2~4人が共同で入居する
・ユニット型個室:個室と、10人程度で利用する共有スペースが併設されている
・ユニット型個室的多床室:ユニット型個室と似ているが、多床室をパーテーションなどで分割しているため、完全な個室ではない
機能訓練室が充実している
老健では、手厚いリハビリを行うため、機能訓練室が充実していることが一般的です。ベッドでマッサージを受けたり、平行棒や階段で歩行訓練を行ったり、運動療法機器で筋力強化を行ったりと、さまざまな訓練が受けられる施設が多いです。
その他の共有スペース
そのほかにも、リビング、食堂、レクリエーションルーム、トイレ、浴室、洗面所、洗濯室、診察室などの設置が義務付けられています。
老健の入所条件
老健に入所できるのは、原則65歳以上かつ要介護1以上の方です。さらに、病状が安定していて入院が不要である、リハビリが必要である、といった方が対象となります。ただし、40~64歳でも、特定の病気によって要介護認定を受けている方は入所が可能です。また、病院からの退院後、自宅に戻るまでの短期間に利用することが一般的ですが、自宅復帰できる状態になければ長期滞在となることもあります。
特養に比べて待機期間が短い
介護施設は入所までに待機時間がかかることがあり、特に待機期間が長いと言われる特別養護老人ホームでは、入所までに数ヶ月~数年かかることがあります。一方で、老健は特養に比べて待機期間が短いと言われています。これは、老健の入所期間が短く、回転が早いことが理由です。また、首都圏は施設数が多いため、待機者も少ないと言われています。
老健の費用
入所費などの初期費用はかかりません。月額費用(介護サービス費、居住費、食費、日常生活費)の目安は、10~15万円+医療費(入居中に施設外の医療機関を受診した場合)です。従来型個室の場合は少し金額が上がり、25万円程度かかることもあります。また、介護サービス費、居住費、食費は医療費控除の対象になるため、支払った金額によっては所得税の還付を受けることができます。
低所得の方は減免措置を受けられる
所得が一定以下の方は、減免措置(特定入居者介護サービス費)によって居住費や食費が安くなります。例えば、減免を受けられる対象は、世帯全員の住民税が非課税かつ貯金などが1,000万円以下(夫婦の場合は2,000万円以下)の方ですが、それ以外の所得や資産状況でも対象になる場合があります。
なお、減免される限度額は、所得、施設の種類、居室タイプなどによって異なります。
他の施設との違い
高齢者の介護施設として代表的な、特別養護老人ホーム(特養)、民間の有料老人ホームとの違いをまとめました。
| 老健 | 特養 | 有料老人ホーム | |
| 経営 | 地方自治体、社会福祉法人、医療法人 | 地方自治体、社会福祉法人 | 主に民間企業 |
| 主なサービス・特徴 | 要介護の高齢者が在宅復帰できるようリハビリなどを行う | 介護、日常生活の支援 | 介護、日常生活の支援 |
| 医療 | 常勤医師がおり、看護師も24時間常駐が多いため医療ケアは手厚い | 医療ケアよりも介護に重点をおいている | 24時間看護師常駐やクリニック併設のホームもある |
| 部屋の特徴 | 相部屋や個室などさまざまなタイプがあるが多くが相部屋 | 相部屋や個室などさまざまなタイプがあり、ユニット型個室への切り替えが進んでいる | 基本的に個室 |
| 入所条件 | 65歳以上かつ要介護1以上 | 基本的に65歳以上かつ要介護3以上 | だいたい65歳以上からで、要介護の方も介護が必要ない方も入所できる |
| 入所時の初期費用 | なし | なし | 0~数億円 |
| 月額費用 | 10~15万円程度+医療費 | 3~15万円程度 | 15~20万円程度 |
| 入所までの待機時間 | 特養に比べて短い | 数ヶ月~数年かかることもある | 空室があればすぐに入所可能 |
特別養護老人ホーム
介護の必要な高齢者が入所する公的な介護施設です。入所できるのは原則65歳以上かつ要介護3以上の方で、医療ケアよりも介護に重点を置いたサービスを提供しています。居室の種類は老健と同様ですが、徐々にユニット型個室への切り替えが進んでいます。
また、老健と大きく異なるポイントとして、入所までの待機期間が長い、長期入所が前提で終身にわたって介護が受けられ、看取りを行う施設もあることなどが挙げられます。
有料老人ホーム
有料老人ホームは民間企業が運営していることが一般的で、ホテルのような快適な施設や、医療ケアを重視している施設など、さまざまな特徴を持つ施設があります。有料老人ホームには介護付、住宅型、健康型といったタイプがあるため、介護が必要な方も、健康な方も、幅広い層の方の入所が可能です。また、介護付きや住宅型は終身利用することが原則で、看取りを行う施設もあります。
入所にあたってよくあるトラブル・気を付けること
部屋の種類やサービス内容によって費用が異なるため注意が必要です。部屋は4種類あり、部屋の種類と所得によって費用が以下のように異なります。
| 部屋タイプ | 日額 | 負担限度額(日額) | ||||
| 第一段階 | 第二段階 | 第三段階① | 第三段階② | 第四段階 | ||
| ユニット型個室 | 2,006円 | 820円 | 820円 | 1,310円 | 1,310円 | 施設が設定する金額 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,668円 | 490円 | 490円 | 1,310円 | 1,310円 | 施設が設定する金額 |
| 従来型個室 | 1,668円 | 490円 | 490円 | 1,310円 | 1,310円 | 施設が設定する金額 |
| 多床室 | 377円 | 0円 | 370円 | 370円 | 370円 | 施設が設定する金額 |
また、介護サービス費は部屋タイプと介護度によって介護保険で一定に決められており、薬代やおむつ代を追加で支払う必要はありませんが、医師の許可を受けずに外部の医療機関を利用した場合は自己負担となるため注意しましょう。
さらに、夜間の人員が多い、常勤の介護職員や看護職員が多い、認知症のケアが手厚いなど、プラスアルファのサービスが提供されている場合は金額が加算されるため注意しましょう。
入所までの流れ
老健に入所できるのは要介護1以上の方なので、まずは介護認定を受けましょう。介護認定を受けるには、住んでいる自治体の窓口で申請し、審査を受ける必要があります。
その後、施設に直接申し込みをしますが、入院中の場合は医療ソーシャルワーカー、在宅介護中の場合はケアマネジャーに相談するとスムーズです。申し込み後、本人や家族との面談、書類の提出、入所判定を経て契約、入所と進みます。
自宅復帰のためのリハビリをするなら老健の検討を!
老健は、自宅復帰を目指すためにリハビリをメインに行う介護施設です。一般的な老人ホームのように終身で入所することはあまりなく、短期間で退所することが多いため、入所待機期間も短いとされています。病院からの退院後の自宅復帰前にリハビリを行いたい方は、老健を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事のまとめ
- 老健は介護が必要な高齢者に介護やリハビリなどのサービスを提供し、自宅復帰をサポートする施設
- 地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが運営する公的な施設であり、一般的な老人ホームとは異なり、医療やリハビリのケアが手厚く、自宅復帰のサポートがメイン
- 利用者は病院から退院後の自宅復帰目的の人が多く、入所期間も3ヶ月~半年程度と短めであることが特徴
- 入居条件は原則65歳以上かつ要介護1以上の人で、「病状が安定していて入院が不要」「リハビリが必要」といった方が対象となるが、40~64歳でも、特定の病気によって要介護認定を受けている場合は入所が可能
- 入所費などの初期費用はかからず、月額費用の目安は10~15万円+医療費(入居中に施設外の医療機関を受診した場合)となる
- 基本的には施設に直接入居申し込みを行うが、入院中の場合は医療ソーシャルワーカー、在宅介護中の場合はケアマネジャーなど、医療・介護専門職に相談するとスムーズに進められる




